読む映画
「感想」に毛の生えた程度のレビューをシコシコ書いています  ネタバレだらけなので、未見の方はご注意ください~
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モーターサイクル・ダイアリーズ
2004年 イギリス・アメリカ合作
恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞
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 キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラの若き日々の貧乏旅行を描いたロード・ムービー。私はロード・ムービーが大好きなので、この作品にはすっかり魅了されてしまった。

 ゲバラと言えば、もはや「神」とも言える存在で、ラテンアメリカの精神的支柱と言ってもいいような人物。まず、そんなゲバラを描こうとした監督のウォルター・サエスや、主演のガエル・ガルシア・ベルナールに敬意を表したい。
 また、プロデューサーであるレッドフォードの、アメリカ人離れした見識の広さにも、敬意を表したい。

 ゲバラが実に人間臭く、生き生きと描かれているのがいい。
 若く、好奇心と行動力は人並み外れて強かったとは言え、英雄でも何でもない一人の若者に過ぎなかったゲバラが、長い旅を通じて何を感じ、何を心に刻んできたのかが、丁寧に描かれている。

 この作品でのゲバラは、喘息持ちで、ダンスは(ラテンアメリカの人間のくせに)全くダメ、と意外な一面を持っていたことが描かれていて、親近感を抱かせてくれる。
 しかしその一方で、とにかくバカ正直で、嘘をつくことができなくて、そして何より愛情に満ち溢れていて、誰よりも勇気がある。そんな、敬意と親しみを同時に憶えずにはいられないような愛すべきゲバラを、ガエルが素晴しい演技で表現していた。
 強さ、知性、繊細さ、愛らしさを兼ね備えたガエル無くして、この作品は無かったかもしれない。

 相棒のアルベルトを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナも素晴しい。口が達者で、一見軽薄でありながら、知性も垣間見せるような難しい役柄を、見事に演じていた。

 かつてバックパッカーだった私としては、2人が1950年代に行ったこの貧乏旅行は、とても興味深い。パタゴニアの寒風吹き荒れる大平原に野宿し、吹雪のアンデスを越える。
 それをポンコツバイクに荷物を満載して、何度も何度も転倒し、壊れた部品をハリガネで固定したりしながら、常にヒヤヒヤ状態で旅をしていたのだから、これはもう無謀以外の何物でもない。吹雪くアンデスを、壊れたバイクを押し上げながら進んでいたなんて・・・。

 結局途中でバイクはオシャカになってしまい、徒歩とヒッチハイクで進んでいくことになる。「モーターサイクル・ダイアリーズ」なのに、モーターサイクルを失ってからの旅の方が面白かったりする。
 実際、バイクで(ポンコツで極めて遅いとは言え)風景をすっ飛ばしながら進むのは爽快かもしれないが、そこには出会いは生まれにくい。実際、バイクにまたがっていた頃の彼らは、ヤンチャである意味タチの悪い旅人に過ぎなかったように思える。旅先で出会う人たちも、胡散臭い目で彼らを見ていただろう。
 徒歩で歩くようになって初めて、彼らは現地の人々の視線で物を見ることができるようになった。アルゼンチンの裕福な家庭のオボッチャンだった彼らが、チリ・ボリビア・ペルーといった国々で不条理な世界、つまり善良な多くの人たちが一部の資本家たちに搾取され苦しんでいるという世界を目の当たりにしえたのも、地を這うように歩いたが故だったと思う。

 多感なゲバラはこの旅でいやというほど多くのことを感じたのだろう。旅の終わりの頃、ハンセン病施設で自分の誕生日のパーティで、「南米大陸を統一しよう」なんてスピーチを唐突にぶってしまうあたりが、この青年の純朴さ、誠実さを表していると同時に、英雄となった彼の資質を表している。そして、これがこの作品のクライマックスであり、「稀代の革命家・ゲバラ」が誕生した瞬間だったと言えるだろう。

 ロード・ムービーとして純粋に楽しい作品であると同時に、ゲバラという人物が形成されてきた過程の一部を知ることができるという、最高の作品だった。

 いわゆる全共闘世代の人たちがノスタルジーを求めて観に来てたりするのかな、なんて思ったが、ガーデンシネマの観客はほとんどが若者だった。ゲバラという人物を色眼鏡無しで見られるのはいいことかもしれないが、一方でこの作品だけでゲバラという人物を評価してしまうのは危険な気もした。


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