読む映画
「感想」に毛の生えた程度のレビューをシコシコ書いています  ネタバレだらけなので、未見の方はご注意ください~
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阿弥陀堂だより
 「雨上がる」で黒澤明の遺稿となったシナリオを映画化した小泉堯史監督の作品。
 奥信濃に移り住んだ夫婦と、村の人々の生活を描いている。

 舞台も地味ならキャスティングも地味(寺尾聰と樋口可南子という夫婦が主人公)。その上タイトルも地味という、どう考えても若者受けしない作品であり、実際私が観た上映館でも、9割以上は中年・老年層であった。

 そんな若者への媚びへつらいを拒絶したかのような作品なだけに、興行的には低調のようで、実際私が観たスクリーンも、50席足らずの極小スクリーンだった。
 しかし、このまま野に埋まってしまうのはもったいない、とてもいい作品だった。

 「農村を美化しすぎている」という批判がある。確かに出てくる人みな善人ばかりで、浮世離れしているかもしれない。
 しかし、それでいい、と思う。理想社会なのかもしれないが、こんな社会もあるよ、こんな生き方もあるよ、と提示してくれただけでもうれしい。社会の暗い面、いやらしい面を描く作品が多いなか、その対極にあるような善意溢れる作品があったっていい。<

 そして、この作品には何よりの「宝」がある。「阿弥陀堂」に住むおうめ婆さんを演じた北林谷栄さんの演技が、神がかっていると表現したくなるくらい、素晴しい。91歳のおばあさんが、どうしてこうも躍動感溢れ、ユーモラスなのに情に厚いという役をこなせてしまうのか。

 このおうめ婆さんの言葉である「阿弥陀堂だより」がまた素晴しい。
 例えば、こんな調子。

     目先のことにとらわれるなと世間では言われて

    いますが、春になればナス、インゲン、キュウリな

    ど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふう

    に目先のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳

    になりました。



 そんな美しい言葉を紡ぐおうめ婆さんを見るだけで、この作品を観る価値はある。それくらい素晴しい演技なのだ。

 小手先の目新しさではなく、正統的なつくり方で良質の作品を作ることができる、こういう監督が映画を作り続けられる限り、日本映画も捨てたもんじゃない、と思う。
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群青の夜の羽毛布
 監督は、「がんばっていきまっしょい」の磯村一路。
 母親に抑圧されて引きこもりになった女性が主人公という、重苦しい作品。前作「がんばっていきまっしょい」で田中麗奈が、カヌー競技に没頭している汗臭くも爽やかな女子高生を演じたのとは対照的に、この作品では本上まなみが、か細く人形のような、青白い女性を演じている。

 その本上まなみの美しさは予想外だった。目オ閉じてたたずむ姿など、はっとするほど美しい。前作での田中麗奈もそうだが、この監督は女優の美しさを引き出すのが上手い。神代辰巳らの下でピンク映画作家としてスタートしたというその経歴が活きているのだろうか。

 その美しい本上まなみにひたすらうっとりとしていればいいのだろうが、映画ファンのはしくれとしてはそういアイドルオタクのようなままではいけないと思い直し(観客の半数はそういう雰囲気の人であった)、物語に注目してみると、すこし人物の描写に深みが足りないと思えた。

 優等生で活発だった主人公のさとるが、どうしてああも病的な引きこもりになってしまったのか、よくわからない。さとるの家庭の病みっぷり知ったテツオの苦悩ぶりも描き足りない。能天気おバカにしか見えない。これは演技力の問題というより、脚本の問題だろう。

 と厳しいことを書いたが、本上まなみの美しさを見るだけでも一見の価値はある。「がんばっていきまっしょい」が田中麗奈を見るだけでも一見の価値があるのと同様に。

 あ、くどいようだが私はアイドルオタクではないのであしからず。
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OUT
 桐野夏生の小説「ターン」を平山秀幸が映画化。「弁当工場で働くパート女性たちがバラバラ殺人に加担する」というオドロオドロしいプロットだが、不思議と後味の良い作品だった。思えば平山監督の過去作「愛を乞うひと」も、「児童虐待」という暗澹たるテーマながら、観終わった後は不思議と爽やかさの残る作品だった。平山監督は、重いテーマを描いてもどこかに希望を残しておきたい人なのかもしれない。

 だいたい、風呂場で主婦らが死体を包丁でバラバラにしてしまうのだから、正視に堪えるものではない。首を断ち切られた死体が転がっていたり、バラバラにした手や足をポリ袋に包んでダンボールに詰めてたりするのだから、凶悪そのものだ。それなのについニヤニヤとして観てしまう。凶悪犯罪を犯しているはずの主婦たちがあまりに平凡で、そのうろてえっぷりが可笑しいのだ。また、慣れてきた主婦たちが機械的に、まるで弁当屋での仕事のように手際よく死体のパーツをダンボールに詰めていく「作業」をしながら談笑するさまが、どこかズレていて可笑しいのだ。

 そんな可笑しさを支えているのが、主婦たちを演じた原田美枝子や倍賞美津子、室井滋といった芸達者な女優たち。なかでも原田美枝子はさすがだった。いまや誰もが認める大女優だが、やはりこの人の演技力はずば抜けている。

 意外だったのが、香川照之。竹中直人ばりの迫力演技では存在感がある役者だとは思っていたが、さほど幅のある演技ができる役者というイメージはなかったので、この作品での抑えた演技での存在感には驚かされた。要注目の役者だ。

 重いテーマを娯楽作として描きながら、上質の人生賛歌に仕立て上げる平山監督には拍手を送りたい。そして、原田美枝子と倍賞美津子の水着姿には、★5個をあげたいところだ。
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ごめん
 小6の少年の青い青い恋のお話。
 冒頭、少年が授業中に突然精通してしまうという、ウブな女性ならちょっと退いてしまうようなシーンから始まるのだが、男である私にとっても、ちょっと気恥ずかしいシーンである。オッサンの域に近づきつつある私が忘れかけている記憶が、ムクムクと頭をもたげてくる。

 そうそう、授業中に突然ムクムクと頭をもたげてくる「ブツ」にヒヤヒヤさせられたこともあった。カピカピになったパンツの処分に困ってベッドの下に隠したこともあった。自分の部屋でこっそりと、硬くなった「ブツ」に定規をあてたこともあった・・・。そんな、青臭くてカッコ悪い思い出が生々しくスクリーンに映し出されていた。オトナになった今だから笑っていられるが、当時は必死だったもんだ。

 そんな映画だからだろうか、観客は男性が過半数。男性の方が多いなんてことは、ミニシアター系の作品ではそうそうあるもんじゃない。そう言えば、私の後ろには小学校低学年らしき姉弟を連れたお母さんがいたが、こういう映画だと知ってて観に来たのだろうか・・・。

 精液のことを「おしる」、精通のことを「蛇口が開いた」なんていう表現をしている。舞台が大阪っていうこともあり、何とも言えない寛大さと言うか大らかさのようなものを感じて、心地よい。
 ただ、主人公の少年の心理の描き込みがちょっと足りなかったような気もする。もっと「わけわからへん」情動への困惑が伝わってきてもよかったのに。むしろ、ヒロインの少女の心理のほうが上手く描かれていた。
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