読む映画
「感想」に毛の生えた程度のレビューをシコシコ書いています  ネタバレだらけなので、未見の方はご注意ください~
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ブラックホーク・ダウン
 93年に起こった、アメリカによるソマリアへの軍事介入。近年稀にみるようなアメリカ軍の大失敗に終わった、ソマリアへの軍事介入を描いている。
 「プライベート・ライアン」を彷彿とさせる、徹底したリアリズムに立脚したこの作品をどう捉えたらいいのか、日本人の私にはなかなか難しい。ソマリア内戦と、アメリカによる軍事介入について、さほど深い知識を持たない私にとって、まずこの作品がどこまで事実に忠実なのか、言葉を変えればアメリカの独善性と距離を置きえているか、その点がまず不確かであるからだ。
 それに加えて、①軍事介入は是か非か ②製作者側の意図に温度差がある ③一般的なアメリカ人がどう捉えるのか という点で、いろいろと考えさせられたからだ。

 ①については、私は元来、単純に「アメリカがしゃしゃり出てくるべきじゃないだろう」と考えていた。しかし、ソマリア内戦については、必ずしもそう言いにくい面もありそうだ。というのは、部族紛争の張本人たるアイディード将軍があまりに強権的であり、国連の仲裁を敵視し、国連軍(パキスタン軍)の兵士20人を殺戮するという蛮行に及んだという事実があるからだ。国連側に宣戦布告してきた相手に、平和的な手段で解決を望むのは不可能に近いだろう。だからといって、虐殺を放置しておいていいのか。国連主体の平和維持活動そのもののありかたが、根本的に問われてしまう。

 ②については、原作者であるジャーナリストのマーク・ボウデンと、監督のリドリー・スコット、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが、言ってることが違いすぎるのだ。
 原作者のボウデンは、「軍事介入のもたらす結果について考えてほしい。それはアメリカにとって本当に必要なことなのか?どんな状況なら戦争もやむをえないと言えるのか?というようなことをね」と言い、監督のスコットも「この映画が問いかけているのは、ソマリアで起こったような事態に大国が介入すべきかどうかという、その問題だ」と言っている。その一方で、プロデューサーのブラッカイマーは「自分の命以上に他人の命を気遣う男たちの同胞愛の物語を語りたいと私はかねがね思っていたが、それはまさに、ここに登場する兵士たちのやったことだった。彼らには、自分が助かるよりも仲間が生きて帰郷することの方が大切なんだ。それは戦時下のヒロイズムであり、どんな映画にとっても力強い題材だ」などと言っている。ハリウッドお得意の「戦時下のヒロイズム」をここでも再現しようとしているのだ。事実、物語の終盤では、作戦から生還した兵士たちの、「仲間のために戦っている。それだけが戦う理由だ」「英雄になるために戦ってるんじゃない。結果としてそうなるだけだ」というようなセリフがある。

 ブラッカイマーと言えば、かの「パールハーバー」のプロデューサー。それだけじゃなく、「アルマゲドン」「エネミー・オブ・アメリカ」といった作品も手がけ、ハリウッドに蔓延するアメリカ一国主義、偏狭なナショナリズムを象徴する人物である。ブラッカイマーが絡んでさえいなければ、もっといい作品になりえたんじゃないだろうか。

 ③は、この作品があまりにリアリズムに徹しすぎていて、観客の捉え方が千差万別になることが間違いないということである。事実、私が映画館で観たときも、大学生らしいイマドキの青年が、「ああいうとこではこうすりゃ撃たれないで済むのによー」なんてぬかしていた。「アクションもの」として捉えられているわけである。
 アメリカ国外にはとんと無知な「一般的」なアメリカ人がこの作品を観てどう思うだろうか。「レンジャーってすごいなあ」「ソマリア人って野蛮」「知らない国のためにアメリカ人が命を賭けるなんて馬鹿馬鹿しい」そんなとこではないだろうか(←偏見


 いずれにせよ、この作品が観客に提示してくる生々しい「戦争」の現実は、観客の戦争観に、何かしらの変化をもたらさずにはいないと思う。製作者がブラッカイマーであることだけで批判的な眼を向ける人も多いだろうが、必ずしもブラッカイマー色に染まりきった作品ではない。

 原作では、もっとソマリア人側の立場も描かれているらしい。その一方で映画では、やはりブラッカイマー作品であるという制約からか、アメリカイズムとでもいうべき独善性を感じる部分も多々ある。しかしそれでも、とおりいっぺんの戦争映画とは一線を画した作品であると思う。
 「面白い映画だよ」と人に勧めることはできないが、とても心に残る作品だった。

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